Owner Gallery     #19             フルスクラッチ作品
 MASERATI T2/SS  1958    空冷単気筒 排気量50cc 3hp/8700rpm 手動3段変速 重量49kg

3年ほど前に、プロタージャパンのホームページに掲載した旧作品を改修しました。新規製作の合間に補修を考えて、ガレージ?から引き出し眺めていると少し恐ろしくなりました。何しろ製作後10年以上は経過していますが、よくもこんな工作レベルでスクラッチに挑戦していたなと・・・・・・・・・本当に思い入れのみで怖いもの知らずで作っていたが恥ずかしい限りです。今回少し新しい資料も入手できたので、大好きな50ccクラスのシクロをコンペティションマシンに変身させて、ガソリンタンクに身を伏せて走る精悍なイタリアンレーサーを目指しました。
前回お伝えしたトーハツランペットCA2から若干あとの作品ですから、造型の基本ベースに混合エポキシパテを使っています。プラ素材の骨粗鬆症化と同じようにこのパテも経年変化で異質素材との接合面に細かいひび割れが発生していました。最初は一部のパーツを作り足して2週間もあればと思っていましたが、既存部品の転用は到底そのままでは人前に出せる代物でないことがわかりました。
どうせ手間をかけてやり直すなら、気がかりな可笑しい部分を新規製作でスッキリ(自分の気持ちの問題で)させようと無謀にもホイル以外は、ほぼ全部再製作になりました。                                                 柴田一彌

 
改修前の作品写真 (2001年プロタージャパンのHP自由空間に発表していた左右の写真2枚)
最初の作品は、ほぼ生産車から保安部品を外したままの仕様に設定していました。
資料もそれだけしかなく、工作もいい加減で省略だらけで雰囲気だけの出来上がりでした。
50ccの小さな車体の可愛さで、何とかカバーしていたのでしょう赤面ものです。
写真にも問題ありです。この2枚は同日同じ条件で撮影したのですが背景の色が変です。



先ずフレームの基本構成に大きな誤りがあります。さらにエンジンの架装方法・キャブレタ・Fフォークなど主要の部分で妥協できない沢山のミスや手抜きが重なっています。詳細は改修作品の写真と一緒にお伝えします。
とりあえずバラバラにして使える作り変える部品の設定をしました。例えばガソリンタンクは補修でないと、多分同じように出来ないだろう。
タンクキャップは作り直しに・・・・
エンジンは両サイドカバーが完全な誤りだから、今回再製作・・・
虫ピンでのネジ表現は止めて正しい数だけマイナスボルトをつくる・・・
ホイルはこのシクロサイズのリムがないので洗浄して使う・・・
シートは形状も含めて再製作が必要・・・
Fフエンダーは全周型からハーフタイプに改造と・・・

沢山の部品つくりを覚悟しました。
使っていたタイヤですが、カビが出て且つ大きくヒビ割れがあります。リム同様にこのタイヤの代品がありません。瞬間接着剤と塗装で何とかしようという結論です。凄く汚い部分をお見せしています。
今回、改修の引き金になった原因です。フレームを後方から金尺にあてて見ますと垂直でこんなに曲がっています。
参考的なお話ですが、この作品を作成したときは治具など使っていません。平面の実寸図面にプラロッドをあて、Rを設定していました。人間の眼は正しいのですが、とても曖昧な面もあります。左右対照もやはりいい加減な精度で行っていたのでしょう。

03mmの誤差はプラの曲がり特性を利用すれば修正可能と判断して引っ張りながら形づくって(分かり易く言いますとやりとりです)まとめていました。
しかし無理な力で組んだものは経年変化でこんなに歪がでるという典型例です。モデリングノートでフレームの工作にこだわっているのはこんな理由もあります。
勿論モデラーの皆さんはそこらを認識されているだろうと思いますが、これから改造などの大工作に挑戦される方は面倒でも手順通りに作業される事が大切だと思います。(それにしてもひどい歪みです)

下の写真2枚は、いかにいい加減な工作をしていたかの発表です。

写真左
タンクマークは本来ブラス製でレース仕様では取り外されています。アクセルもクラッチも同じワイヤーでしかも1mm以上の線材を無神経に使っています。手動変速レバーもつくりが不十分で可笑しなものになっています。
写真右
間違い探しのクイズのようですが、致命的なミスはフレームです。ステアリングヘッドから後方に伸びるダウンチューブが途中でシートレール側に合わせて付けられています。正解はシートレール側のチューブがダウンチューブにつながる・・・逆になっています。さらに大笑いはメインフレーム径が2mm、シートレールのフレーム径が3mmもある・・・・・・
こんな事はありません。また点火コイルも省略して簡単にクランクケースから取り出していますが・・・それもありません。
またチエーンカバーの位置も誤りです。僅か2枚の写真からでもこんなに問題点がある・・・冷や汗物の映像です。


マセラティT2SSの背景について少しだけ


1950年代の前半、イタリア国内には2輪に関わる製造業は200社以上ともいわれ著名なメーカーから町工場のレベルまで林立状態であったそうです。製品の需要も175cc以下の小排気量車が大半で特にシクロ(ペタル始動の50ccエンジン付き自転車)と呼ばれる50ccに集中していました。血気盛んな長靴の国の人たちはその小さなシクロのカテゴリーのなかでレースの世界を広げてきます。
そしてイタリアンカップと名付けられたこの新しいレースはやがて62年から50cc世界選手権に発展していきます。僅か50ccの排気量に人が乗って100km/h以上で競技が出来るマシンつくりは、ただ驚くばかりです。
マセラティ社はご存知のように高級スポーツカーの生産とFIレースで有名な自動車メーカーです。マセラテイ一族の長兄カルロが2輪スポーツが大好きでその趣味が嵩じて、小規模の二輪メーカーを設立したものです。生産期間も機種も僅かですが、イタリアンらしいマシンを創りだしていました。


 改修が終った新しい作品
新しい資料を基にT2SSのレーシングバーションにしました。今回は部品つくりの詳細は省略しました。
(製作途上で写真記録を忘れるてしまい残念です)最初に申し上げたように全部品ほぼ新規製作です。
問題のフレームは、治具を使って2mmロッドでつくり、初めて飛行機用?のカラー、クレオスのクラッシックシルバーを使いました。鈍い半光沢でかなり沈んだ色合いですが、銀フレームのギラギラが無くて他の塗色を引き立てるようです。
シリンダー・ヘッドともにプラ板03mmを組み合わせています。ガスタンク下に大型の点火コイルがあります。

クランクケースカバーのアルミのめくら板はペダルシャフトを埋めた跡です。
始動は押しがけですが、このクラスでは車体後部を持ち上げて後輪をエイヤッと廻す事もあるようです。

排気菅は4mmの銅パイプとプラ材の積層と組み合わせています。EXのフランジはアルミパイプを加工しています。

リアサスは形が違っていたので4種類のプラロッドで・・・予想外に時間がかかりました。
クランクケース下から回転計の取り出しをしています。
水平に取り付けられたデロルト16mmのキャブレタは5mmのプラ棒から組み合わせて。アクセルワイヤー横の突起はチョークレバーです。エァファンネルは今回初めてアルミ材を旋盤で削りだしました。

そのキャブの手前に手動変速用の2本のリンケージがあります。

フレームの正しい接続はこうなります。
レギュレーション上必要な前方ゼッケンプレートは、長方形のアルミ板を丸く叩き出して付けられています。小排気量マシンを風の抵抗から少しでも減らそうとする工夫なのでしょうか、ほのぼのとした何かを感じます。初期にはタコメーターはありませんでしたがマシンの性能がアップしてきてからは、スミス製のクロノトリックが装備されるようになつたということです。
トップブリッジの横溝は、クリップハンドルに交換されたために残った生産車用のバーハンドルの跡です。押さえ蓋は外されています。タンクキャップは径で1mm大きく作り変えました。タンク側面の穴はタンクマークを外した跡のネジ穴です。
最初のサイドゼッケンはサイズもいい加減なものでしたからこれも新しく03mmプラ板からいつもの手法で作りました。
写真では十分見えませんがシートのリベットを薄くして突起が出ないように工夫しました。
カメラ目線で一番見栄えのする前後の写真です。きわめて細い鋼管を組み合わせたバックボーンフレームは華奢であり本当に競技の世界に耐えうるか少し疑問もあります。(昔全く同様のフレームを採用していた宮田製作所のスーパースポーツ50cc思い出しました。)
しかしそのフレームに火星人の頭(ヤマハ250YD−1のタンクがそう呼ばれていた)のようなタンクを載せて、ロングシートの最後尾までお尻を引いてドロップハンドルにしがみつき、遮二無二コースを疾走するライダーの姿が想像できます。半世紀も前にこのような流麗なそして美しいモペットがあったとは信じられないくらいです。
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